アクセシビリティ推進のための社内ハンドブック作成事例

"Accessibility Handbook"

この記事は Goodpatch Advent Calendar 2024 の3日目の記事です。

こんにちは!エンジニアの kato です。

突然ですが、みなさんは「アクセシビリティ」に取り組んでいますか?

私は社内でアクセシビリティ推進チームとして活動しており、その取り組みが評価され、2024年度下半期の総会で Most Valuable Knowledge に選ばれました。 goodpatch.com

今回はその活動の中でも、特に私が力を入れた「社内向けアクセシビリティハンドブック」の作成についてお話ししたいと思います。背景や制作の流れ、工夫したポイントをぜひご覧ください!

アクセシビリティとは?

アクセシビリティとは、身体的特徴・年齢・文化的背景・環境などにかかわらず、あらゆる人がアクセス可能(Access-Ability)な度合いを表す概念です。

例えば、視覚障害のある方がスクリーンリーダーを使ってWebサイトを閲覧する、という状況を考えてみてください。そのとき、適切なアクセシビリティ対応が行われていれば、誰もが同じ情報を等しく受け取ることができます。

アクセシビリティについては、Goodpatch Blogでも様々な記事を公開しています。

goodpatch.com

なぜアクセシビリティに取り組むのか?

グッドパッチのミッションとつながる

私たちのミッションは「デザインの力を証明する」ことです。その力をより多くの人に届けるためには、アクセシビリティが欠かせません。すべての人に開かれたデザインを作ることで、生活をより豊かにすることができると信じています。

クライアントワークでの必要性

私たちは日々、多くのクライアントのプロジェクトに関わっています。アクセシビリティを意識したデザインや開発は、プロダクトのクオリティを底上げするだけでなく、より多くのユーザーに喜んでもらうために重要です。

個人的な想い

私は「いいものを作りたい」というシンプルな気持ちでエンジニアの道を選びました。ここでいう「いいもの」とは、誰にとっても公平で、使いやすいものであるべきです。アクセシビリティへの取り組みは、私自身のものづくりの根底にある価値観とも深く結びついています。

社会的な背景

2024年4月に施行された法改正により、障害者への「合理的配慮」が企業にも求められるようになりました。この変化をきっかけに、アクセシビリティへの関心が一段と高まっています。これを「今こそ動き出すチャンス」と捉え、私たちも対応を加速させました。

ハンドブックを作ることにした理由

WCAGの課題

アクセシビリティのガイドラインとして有名な「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」があります。しかし、このWCAGをそのまま現場で使うにはハードルが高いと感じる部分がありました。

  • 専門的すぎる:内容が詳しい分、専門知識がないと難しく感じることがある
  • 抽象的で実践しづらい:柔軟性がある一方で、具体的な現場対応には少し遠い部分がある
  • 情報量が多い:すべてを理解するのは、かなりの労力が必要
  • Web中心:WCAGは主にWebコンテンツ向けの基準なので、アプリや他のプロダクトに応用するには読み替えが必要なこともある

社内啓蒙の必要性

まず、社内でアクセシビリティを理解してもらうことが大事だと考えました。チーム全員が同じ方向を向いて取り組むためには、共通の基準や指針が必要です。それを実現する手段として「ハンドブック」を作ることにしました。

どんなハンドブックを作ったのか?

ハンドブックの構成

以下のような要素を盛り込んで、誰もが使いやすく、理解しやすい内容にまとめました。 ハンドブックの一部を、スクリーンショットを交えて紹介します。

1. アクセシビリティの概要と取り組む理由

「アクセシビリティとは何か」「なぜ取り組むのか」を、グッドパッチのミッションとリンクさせながら説明しました。

アクセシビリティの概要についての説明と、なぜ取り組むかが書かれた画面のスクリーンショットです。参考サイトとして、グッドパッチから発信しているアクセシビリティ情報についても書かれています。
アクセシビリティの概要と取り組む理由の一部のスクリーンショット

2. ガイドライン

WCAGの内容を初学者でもわかりやすいように再構築しました。また、アクセシビリティイベントで学んだ内容や開発現場の知見も反映し、Webだけでなくアプリや他の成果物にも対応できる内容にしました。 Notionを使用することで、フィルターで絞り込みしやすく、目的に合わせて柔軟に参照できるようになっています。

アクセシビリティガイドラインのスクリーンショットです。Notionで整理されており、「名前・関連するWCAG達成基準・責任を持つ職種・WCAG達成基準・プラットフォーム・必要としている人」のプロパティを持っています。「音声読み上げに対応する」「動画にキャプションテキスト(字幕)を提供する」のような、WCAGとは多少粒度が異なるものになっています。
アクセシビリティガイドラインの一部のスクリーンショット

3. アクセシビリティチェックリスト

成果物がアクセシブルかどうかを確認するためのリストを作成。具体的な基準を設定し、職種ごとに簡単に使える形にしました。

4. 外部ツールの紹介

アクセシビリティ対応を支援する便利なツールをピックアップしました。

開発者サポートツールのスクリーンショットです。デザイン・実装時に使用できるアクセシビリティサポートツールについて、名前・概要・URL・プラットフォームが書かれています。Figmaプラグインの「Stark」などがあります。
開発者サポートツールの一部のスクリーンショット
ユーザーサポートツールのスクリーンショットです。名前・概要・URL・プラットフォームが書かれています。Windowsのスクリーンリーダー「NVDA」などがあります。
ユーザーサポートツールの一部のスクリーンショット

5. FAQ

アクセシビリティに関する疑問や取り組み方を、Q&A形式でまとめました。

FAQのスクリーンショットです。「法律違反になりますか?」「完璧に対応する必要がありますか?」「対応コストはどのように見積もるのがよいですか?」など、一般的によくある質問と回答が書かれています。
FAQの一部のスクリーンショット

6. 参考情報

他社のガイドラインや事例をまとめ、より深い理解を助ける内容を追加しました。

参考情報のスクリーンショットです。「WCAG」「Appleのガイドライン」「Googleのガイドライン」などへのリンク集になっています。
参考情報の一部のスクリーンショット

おわりに

このハンドブックを作ったことで、社内でのアクセシビリティ推進をスムーズ進めるための体制構築ができました。 引き継ぎハンドブックの内容をアップデートしつつ、このハンドブックを活用してアクセシブルなアウトプットを増やしていくことで、私たちが目指す「デザインの力」が証明できると信じています。

この記事を読んで、少しでもアクセシビリティに興味を持っていただけたら嬉しいです。社内やチームで「アクセシビリティに取り組んでみよう」と思ったときは、ぜひ参考にしてみてください!

Goodpatchではアクセシビリティ好きなエンジニアの仲間を募集しています。 私たちと一緒に、より良い未来を目指しましょう!