この記事は、Goodpatch Advent Calendar 2024 24日目の記事です 🎄
グッドパッチでエンジニアリングマネージャーをしている大角です。私はこれまでプレイヤーとして活動してきましたが、去年からマネージャーとして事業づくりや組織づくりにも関わっています。
私がマネージャーとして取り組んでいるものの1つが「アクセシビリティ」の推進です。グッドパッチでは、これまでもアクセシビリティに関心のあるメンバーの努力によってアクセシビリティ文化の基礎が支えられてきましたが、組織的な取り組みまで昇華できていませんでした。そこで、2024年4月の障害者差別解消法の改正・施行をきっかけに組織的に取り組むことを決め、さまざまな施策を実行してきました。
この記事では、グッドパッチで行った取り組みを共有することで、これからアクセシビリティに取り組みたいと考えている人たちの参考になれば幸いです。前提として、これから紹介する施策たちは弊社で実際に行った事例であり、一定の再現性があるものと考えていますが、他の個人や組織に必ず当てはまるものではありません 🙏
組織で取り組むアクセシビリティのはじめ方
Slackチャンネルで発信してみる
もともと、弊社のSlackには #accessibility チャンネルがあり、アクセシビリティに関わるさまざまな情報共有がされていました。しかし、一部のメンバーがたまに情報共有する程度に留まっており、あまり活性化できていない状況でした。そのため、まずは Slackチャンネルで情報共有するところからはじめました。ちなみに弊社では、アクセシビリティ関連のSlackスタンプが押されると、#accessibility チャンネルに自動で投稿されるように仕組みをつくっており、情報共有に一役買っています。
仲間を集めて、勉強会を開いてみる
Slackチャンネルで情報共有が盛んになってくると、アクセシビリティに関心のある少しずつメンバーが集まってくれます。そこでアクセシビリティに特に関心のあるメンバー数人に声をかけて勉強会を企画しました。
勉強会のコンセプトとしては、まずはアクセシビリティの基礎的な理解を深めることを目的として全職種対象に社内のデザイナーやエンジニアによる「それぞれが考えるアクセシビリティ」をテーマにさまざまな切り口でLTを行っていただきました。また、当日参加できないメンバー向けにも録画を配信するようにしました。
勉強会の副次的な効果としては、職種を超えたコミュニケーションの場にもなっていたことです。アクセシビリティは特定の職種に閉じるものではなく、さまざまな職種の人が関係するものです。そのため、デザイナーやエンジニアだけでなく、PR、マーケティング、カスタマーサクセスなどそれぞれの切り口からアクセシビリティに対する考え方や学びを語れることも1つの面白さだと思います。
自社のプロダクトをチェックしてみる
普段のSlackでの情報発信や社内勉強会を通して、一定の知識が溜まり、組織での温度感も高まります。そこで実際に自社のプロダクトの検査や改善に着手してみます。
弊社の場合は、2024年4月の法改正をきっかけとして、自社コーポレートサイトのアクセシビリティ方針策定を進めていました。そのため、方針を決めるだけでなく、実際に改善していくことを目的として、WCAGに基づいたアクセシビリティの検査を行いました。WCAGの達成基準はたくさんあり、適合検査の作業には専門知識が必要ですが、弊社にはアクセシビリティに詳しいメンバーが在籍していたため、内製で検査を実施することができました。
アクセシビリティ検査のプロセス
- アクセシビリティの方針策定(対象のWebサイト、目標とする適合レベル)
- 検査対象のWebページの選定
- アクセシビリティ検査の実施
- 検査結果のレポート作成
もし、社内でアクセシビリティ検査を実施することが難しい場合でも、まずはデジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」や書籍「Webアプリケーションアクセシビリティ」を参考にしながら、自社のプロダクトで重要だと思われる箇所から小さく検査・改善していくことから始めてみるのも良いと思います。弊社の取り組みについても書籍「Webアプリケーションアクセシビリティ」の「第7章 アクセシビリティの組織導入」の内容を参考にさせていただきました。
組織の取り組みを社内外に発信してみる
社内の勉強会や自社プロダクトの検査結果などを社内や社外に向けて発信することも重要です。社内に発信することで、アクセシビリティに対する組織への理解につながったり、社外に発信することで企業の姿勢を示すことができます。また、社外の反応を社内にフィードバックすることで、自社にもアクセシビリティに取り組む意義を伝えやすくなります。
弊社の場合も、社内勉強会の取り組みやアクセシビリティの検査結果を公開しました。
アクセシビリティは色々な企業が取り組んでいますが、お互いに応援し合う空気感があります。真面目に活動していれば、周囲で応援してくれる人もいるはずです。
社外のイベントに参加してみる
アクセシビリティのコミュニティは盛んで、アクセシビリティ関連のイベントも多くあります。そのため、これから学び始めたい人はまずは気軽にイベントに参加にしてみるのもオススメです。カンファレンスのような大規模でやっているものもあれば、月次で小規模にやっているミートアップイベントもあります。
私自身も今年はさまざまなイベントに参加し、アクセシビリティに取り組まれている人たちのセッションを聴いたり、現地の方と交流させていただきました。最初はちょっと勇気がいる部分もあったのですが、アクセシビリティイベントを企画・運営されている方々はインクルーシブなスタンスを持たられているため、親切に色々と教えていただきました。
他の企業がどのように取り組んでいるのか話を聴いたり、参加者の中には障害当事者の方も参加されているので、自分とは異なる立場やご経験についてお話を聴くことで多くの学びがありました。
社長に話してみる
最後に組織でのアクセシビリティの取り組みを推進していくために重要な「経営側との接続」についてご紹介できればと思います。急にハードルが上がった感じがしますが、アクセシビリティを組織的な活動として行うためには上司、他部署の理解や連携も必要になります。とはいえ、さまざまな事業課題がある中でリソース(時間、お金、人)は有限であるため、アクセシビリティの課題にどれほどのリソースを割くべきかは経営側としても適切な判断が求められます。また、アクセシビリティの方針や検査結果などを公開する場合には会社の公認を得る必要があります。
そこで弊社では、自社のコーポレートサイトの検査結果をもとにアクセシビリティ課題の現状を共有し、今後の改善方針について弊社代表の土屋と会話する場をつくりました。そこで経営側の要望やフィードバックをもらうこともできますし、アクセシビリティの検査結果を公開することや今後の改善方針について合意を得ることができました。
なお、アクセシビリティがビジネスに与える影響については、W3Cが記事を出していたり、弊社のブログでも紹介しているので併せてご参考ください。
おわりに
グッドパッチが組織として取り組んだアクセシビリティの取り組みをご紹介しました。
企業文化や規模によって最適なやり方は異なるかと思いますが、組織としてアクセシビリティに取り組む上で、まずは小さい組織で目標をつくり、実績や成果を積み重ね、徐々に活動の幅を広げていくことが重要だと考えています。また、アクセシビリティについて学ぶ中で障害当事者の方と一緒にコラボレーションしていくことも大事だと考えるようになりました。引き続き、他社の活動も参考にさせていただきながら、グッドパッチでの活動をより良いものにしていければと思っています。
グッドパッチのアクセシビリティの取り組みはまだまだ道半ばであり、自分たちでも学びながら進めている最中です。アクセシビリティに興味があるけど、まだ組織として取り組みができていない方がいましたら、2025年は組織でアクセシビリティをはじめる年にしてみてはいかがでしょうか。