AI時代の大量の文章とどう関わるか ─ 小見出しとボールドから始めるライトな読み方

こんにちは。ソフトウェアエンジニアの池澤孝治です。
日々の業務では、たくさんのドキュメントを読むことがあります。要件定義書や機能仕様書、コードレビューのコメントに目を通したり、最新情報をキャッチアップしたりしています。
そのほかにも、技術系メルマガや社内ドキュメント、note、ブログ、Slackのコメントなど、日々触れる文章はどんどん増えています。

それらをすべて最初から最後まで丁寧に読むのはなかなか難しいです。
ですが「大変だから読まない」「見なかったことにする」だけでは、少しもったいない気もします。

そこで最近、自分の中でひとつ気になっている読み方があります。
それは、まず小見出しとボールドを拾って読むという方法です。

小見出しやボールドだけで文章を完全に理解できるわけではありません。けれど、大量の文章と向き合うときに、著者の関心や言いたいことの輪郭に軽くあたりをつける入口にはなるのではないかと思っています。

この記事では、AIによって文章がさらに増えていく時代に、全部を精読しきれない文章とどう関わるかを、小見出しとボールドという観点から考えてみます。


きっかけ:大量の記事を読む中で、小見出しとボールドを見ていた

私自身、技術系メルマガなどで大量の記事を見たりします。ウィークリーで配信される複数のメルマガ記事は100本以上にもなるので、全部を精読するのは大変です。
そこで、まずタイトルとスクロールバーの量でテーマとボリューム感をつかむ。その後に小見出しを見て、さらに本文中のボールドや強調されている部分をざっと見ます。

ここでいう小見出しは、記事タイトルそのものではなく、本文中で話題を区切るための見出しを指しています。HTMLでいえば、h2やh3以降のような本文中の見出しに近いものです。

そうすると、本文をすべて読まなくても、なんとなく次のようなことが見えてきます。

  • この記事は何について書かれていそうか
  • 著者はどこに関心を置いていそうか
  • 自分に関係がありそうな話題か
  • もう少し詳しく読むなら、どこから見るとよさそうか

もちろん、それだけで内容を理解したとは言い切れません。
しかし、「読むか、読まないか」の二択ではなく、まずざっと関わってみる。そのうえで「気になったものをもう少し詳しく読む」、という段階を作ることはできると思います。

小見出しやボールドを見ることは、著者の意図や思いをすべて読み取る方法ではありません。けれど、著者がどこを丁寧に説明したいと思っているのか、どの言葉を拾ってほしいと思っているのか。その輪郭をつかむ手がかりにはなるのではないかと思っています。

なお、記事内の「ボールド」は、厳密に太字だけを指しているわけではありません。
著者によっては、箇条書き、引用、イタリック、「」、インデント、アイコン、絵文字などを使って、文章の中で強調したい部分を示すこともあります。そうした文章内の強調表現の総称として、便宜的に「ボールド」と呼びます。


小見出しは「丁寧に説明したい場所」

小見出しは、単なるセクション区切りではないと思っています。
もちろん、読みやすさのために入れるものでもあります。文章が長くなったときに、話題を整理したり、読者が迷子にならないようにしたりする役割もあります。

ただそれだけではなく、著者が「ここは少し丁寧に説明したい」と思った意図が、小見出しには含まれると思います。

たとえば、著者が文章を書いている中で、次のように感じる場面があるとします。

  • ここは話題を切り分けたい
  • ここは少し解像度を上げて説明したい
  • ここは流れの中に埋もれさせたくない
  • 読者にこの順番で理解してほしい
  • 自分の経験として、この部分は少し深く話したい

そういうときに、文章中に小見出しが立てられることがあります。
つまり小見出しは、著者が文章の中に用意した特に説明をしたい場所・思いのある場所とも言えます。

読み手から見ると、小見出しを追うことで、著者がどの順番で話を進めようとしているのかが見えやすくなります。

どこで話題を切り替えているのか。どこを独立したテーマとして扱っているのか、どの部分を一段深く説明しようとしているのか。 そうした道筋を、小見出しからざっとつかむことができます。


ボールドは「拾ってほしい言葉への目印」

一方で、ボールドは小見出しよりもライトな強調です。

小見出しほど大きく話題を切り替えるわけではありません。けれど、文章の中で 「ここは少し拾ってほしい」と示すための目印になることがあります。(ここでのボールドは、太字に限らず強調表現全般を含めています)

著者が文章を書いたり推敲したりするとき、次のように感じることがあります。

  • この言葉は拾ってほしい
  • この一文は流されたくない
  • この表現が著者の言いたい感覚に近い
  • ここが文章のつかみどころになりそう
  • この言葉を手がかりにすると、話の意味が伝わりやすそう

そういうときに、ボールドや強調表現を使ったりします。

ボールドは、著者だけのものでも読者だけのものでもありません。
著者にとっては、自分の中にある感覚を言葉としてつかむための取っ手になる。読者にとっては、その文章の関心や温度感を拾うための手がかりになります。

文章は、ある意味で著者と読者のキャッチボールです。 著者が「ここを受け取ってほしい」と思って置いた目印を、読者が「ここがつかみどころかもしれない」と受け取ります。そういう接点として、ボールドや強調表現が使われることがあります。

ただし、ボールドだけで文章の本意がすべてわかるわけではないので、あくまで言いたいことの輪郭にあたりをつけるための目印、として扱いたいです。


小見出しとボールドは、精読の代わりではなく入口になる

ここまで小見出しとボールドの効果を説明してきました。ただ気をつけたいのは、小見出しとボールドだけを読めば、文章を理解できるわけではないということです。

本当に理解するには、やはり本文を読み、文脈を追い、自分の経験とも照らし合わせる必要があります。
著者が伝えたいことは、文章の流れ、具体例、前提、結論など、文章全体を通じて表現されているためです。

しかし、大量の文章がある中で、最初から全部を精読するのは難しいです。
AIでドキュメントの量産や自動記述ができる時代にはなおさら負担になります。

そのため、まず小見出しや強調表現を拾ってみましょう。
すると「ここはもう少し詳しく読んでみたい」「この部分は自分の関心に近そうだ」と感じる入口を見つけやすくなります。
そして気になったら、そこから本文をしっかり読めばいいと思います。

読み飛ばしたところに重要なことが書いてあったらどうしようとか心配もしたりしますが、 「全部読む」か「読まない」かではなく、小見出しとボールドを使った斜め読みを行い、その後で 気になる部分を狙って読むという段階を作るのが良いと思います。 HTMLの文章構造やセマンティックさからみても、ある程度は理にかなっていそうです。
それくらいのライトな読み方があってもいいのではないかと思っています。


小見出しやボールドから、文章の温度感に触れる

小見出しやボールドは、文章を効率よく読むためだけのものではないと思っています。

記事の中には、著者の考えが少しずつ深まり、確信に近づいていく流れがあります。
どこで話題を切り替えたのか、どこで言葉を強調したのか、どこで読み手に立ち止まってほしいと思ったのか。
そうした区切りや強調を拾っていくと、文章の背後にある著者の関心や温度感もイメージしやすくなると思います。

たとえば、ある文章を読んでいて、急に言葉の密度が上がるところがあります。
説明が少し具体的になったり、言い回しが少し熱を帯びたりします。また抽象的な話をしていたはずなのに、急に「ここだけは伝えたい」という感じが出てくる場合もあります。
そういう箇所には、著者の感情や腹落ちが少し残っていることがあります。

もちろん、それだけで著者の思いをすべて理解できるわけではありません。もしかしたらAIが書いた文章の一部なだけかもしれません。
ただ、大量の文章をざっと読むときに、単に情報を拾うだけでなく、この人はどこに熱を持っているのかにあたりをつける入口にはなると思います。

文章にも、プレゼンや音楽のように、流れや盛り上がりのようなものがあります。
小見出しやボールドは、その流れの中で立ち止まる場所を教えてくれる目印のように思います。


AI時代には、文章を無理なく読む力が大切になる

AIによって、文章を書くことはどんどん簡単になっています。
社内記事、ブログ、議事録、仕様書、提案書、調査メモなど、これから文章量はさらに増えていきそうです。

文章を書くハードルが下がること自体は、とても良いことだと思います。
これまで言葉にされなかった考えが文章になったり、忙しくて書けなかった人がAIを使って文章を出せるようになれば、頭の中にあったアイデアを言語化しどんどん形にしやすくなります。

一方で読む側からすると、触れる文章の量は増えていきます。
そのとき、すべての文章を同じ詳細度で読むのはなかなか難しいです。

だからこそ、まず軽く見て、関心があるものを選び、必要なところをもう少し詳しく読む。そういう読み方が必要になるのではないかと思います。
小見出しやボールドや強調表現は、そのための入口になり得ると思います。

AI時代の大量ドキュメントと付き合うには、文章を精緻に読む力だけでなく、文章と無理なく関わる方法も大事になるのではないでしょうか。


書き手の趣旨を伝えるための小見出しと強調表現

ここまでは、主に読み手の話として書いてきました。
ただ、読み手が小見出しやボールドを入口にするなら、書き手側にとっても小見出しや強調表現はただの装飾ではありません。

特にAIで下書きを作った文章では、本文はそれらしく整っていても、自分が丁寧に説明したいことや読者に拾ってほしい言葉が埋もれていることがあります。

AIがつけた小見出しやボールドが、一般的には正しそうに見えることもあります。
でも、それが自分の関心や動機、伝えたいことの熱、表現したい言葉と合っているかは、最後に自分で見直し推敲しながら確認・校正する必要があります。

たとえば、推敲するときに次のように確認してみます。

  • この小見出しは、自分が説明したい区切りになっているか
  • この小見出しの順番は、自分が読者にたどってほしい流れになっているか
  • このボールドや強調表現は、読者に拾ってほしい言葉になっているか
  • AIがつけた強調を、そのまま自分の言葉として引き受けられるか
  • 読者が自然に読み進められる流れになっているか

これはSEO的なテクニックではなく、また小見出しやボールドを増やせば読みやすくなる、という単純な話でもありません。
むしろ、文章に自分の関心や言いたいことの輪郭を残す作業に近いと思います。

AIが文章の多くを書いたとしても、最後に「ここは丁寧に説明したい」「この言葉は拾ってほしい」と感じる場所を見直すと思います。
そうした編集や推敲の中に書き手の意思や感覚が表れるのではないでしょうか。


おわりに:全部読めなくても、文章と関わることはできる

ドキュメントがAIで大量に生成される時代に、人が読んで理解しきれる量には上限があります。
ただ、情報の多さに疲れてフタを閉じ、まったく読まないまま流してしまうのも少しもったいないように思います。

まずは小見出しとボールド、あるいは文章の中に置かれた強調表現を拾ってみて、そこから著者の関心や言いたいことの輪郭に軽くあたりをつけてみましょう。

またプラスαの効果として、小見出しとボールドを使った斜め読みを行うことで、意味まではよく分からなくても「見たことのある言葉」を作れるだけでも十分に役立ちます。
知らない単語や初めて見る言葉が減るだけで、次に出会ったときの心理的なハードルはぐっと下がります。
私も仕事や開発で知らない単語が出てくると焦ってしまいますが、見たり聞いたりしたことがあるというだけでも、だいぶ救いになりました。

小見出しやボールドを文章へ入っていくための入口にする。
AIによって大量に文章が増えていく時代には、こうした文章の構造に沿ったライトな読み方があってもいいのではないでしょうか。

そんな読み方を、これからも試していきたいと思っています。


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