バリューを体現する行動指針 Goodpatch Engineer Principles について

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この記事は Goodpatch Advent Calendar 2021 1日目の記事です。

こんにちは。GoodpatchでUXエンジニアとして働いている大角です。今年もアドベントカレンダーの季節がやってきましたね!🎄

Goodpatchのエンジニア組織では、去年から「Goodpatchのエンジニアにおける行動指針」を言語化する取り組みを行っており、今回はその取り組みについてご紹介できればと思います。

そもそも、なぜ行動指針をつくるのか?

2021年12月時点でGoodpatchには東京オフィスだけで20名ほどのエンジニアが在籍しています(海外オフィスやAnywhereも合わせるともっといます)が、エンジニアでありながら、どのメンバーも「デザイン」に対して関心や興味があるメンバーが集まっています。

私自身は5年ほど前にGoodpatchに入社しましたが、入社当初からGoodpatchのエンジニア組織には特有の雰囲気があるなと感じていました。というのも、それまでの職場ではデザイナーよりもエンジニアの方が多い組織だったり、エンジニアとデザイナーの距離感が遠い組織で働いていたこともあり、自分の周りにはデザインに関するトピックを話題にしたり、実践したりするようなエンジニアはあまりいなかったからです。しかし、Goodpatchのエンジニアはデザイン好きなメンバーが多く、デザイナーとデザインの議論をしたり、新しいプロダクトが出るとみんなで触って楽しんだり、何よりUIへのこだわりが強いメンバーが多くて驚いたことを今でも覚えています。

当時は、そのような特有な雰囲気がありつつも、それらがどのような文化や価値観に基づいたものなのかは言語化していませんでしたし、それで組織も成り立っていたように思います。 しかし、会社としては去年上場を果たし、組織が大きくなる中で、良くも悪くも価値観が曖昧だったゆえに意思決定の判断軸に一貫性が無かったり、新旧のメンバーで期待値がズレたり、最近では採用候補者の方々からもGoodpatchのエンジニア組織について質問されることが多くなってくる中で、意外と自分たちのことを説明することが難しいことに気づきました。

Goodpatchには全社員向けのVision・Mission・Valueがあり、エンジニアもこれらを意識しながら日々の活動に取り組んでいます。

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Goodpatch Core Values
Goodpatch Core Value - Speaker Deck

しかし、これからさらに組織が成長していく中で「デザインが好きなエンジニア」だけでは抽象的すぎるため、それらを体現する具体的な行動を言語化し、組織としてさらに深めていくために「Goodpatchのエンジニアにおける良い行いとは何か?」という問いに対して向き合い、行動指針を策定することにしました。なお、この活動を始めたのは2020年6月でおよそ1年半ほど前になります。

どのように行動指針を考えていったのか?

今回、行動指針を言語化するにあたって、有志をコミッティとして募り、コミッティを中心に言語化の活動を進めつつ、他のメンバーにも定期的にアイデアやフィードバックをもらう形で進めていきました。

行動指針を策定するまで大きく以下のような流れで行いました。

  1. これまでの活動から「良い行い」を言語化する
  2. これから自分たちの「やるべきこと」を言語化する
  3. 上記の結果をまとめ、行動指針として定義する

これまでの活動から「良い行い」を抽出する

最初のステップでは、現場で働くメンバーを中心に会社のVision・Mission・Valueをもとに自分たちの行動を振り返り、Goodpatchのエンジニアとして望ましい行動は何か、という点についてディスカッションを行いました。

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過去を振り返るプロセス

ただ、議論をしていく中で、いくつかの特徴を見出すことができたものの、何か物足りないと感じていました。メンバーと議論する中で気づいたのは、今後の自分たちの姿=未来の話が全く入ってないことでした。そのため、次のステップとして「これから自分たちがやるべきこと」について議論を行うことにしました。

これから自分たちの「やるべきこと」を言語化する

これからの自分たちのやるべきことを考える上では、まずはマネージャーに「今後の組織についてどうしていきたいか?」という点をヒアリングし、組織のビジョンをもとに全体を再設計していきました。そして、行動指針を決める上で重要な観点を以下に絞り込みました。

  • 課題発見と課題解決の観点:デザイナーやチームと一緒にユーザーの課題や解決方法を発見する上でエンジニアの指針となる行動は何か?
  • 仕組みの設計と実装の観点:プロダクトの実装や効果的・効率的に開発できる仕組みをつくるためにエンジニアの指針となる行動は何か?
  • 個人と組織の成長の観点:個人として成長、あるいは組織として成長していくためにエンジニアの指針となる行動は何か?

上記の観点をもとにマネージャーとメンバー全員で行動指針を考えるワークショップを行いました。

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未来を考えるプロセス

過去と未来を踏まえて、行動指針をつくる

前述の「これまで」と「これから」という過去と未来の情報をもとにコミッティでグルーピングと優先順位づけを行っていき、ある程度まとまった段階で他のメンバーにも意見をもらい、フィードバックを重ねながら行動指針として落とし込んでいきました。

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メンバーから出たアイデアをグルーピング

Goodpatch Engineer Principles

前置きが長くなってしまいましたが、1年3ヶ月という長い時間をかけて、ようやく3つのPrincipleにまとめることができました。それぞれのPrincipleについてご紹介します。

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Goodpatch Engineer Principles v0.5

Confront the Unknown - 未知に立ち向かう

エンジニアとして、デザインに向き合うときに重要なのは「知らないことにいかに立ち向かっていけるか」ということです。新しい何かをつくるときほどユーザーや実現性について分からないことは多く、エンジニアを葛藤させるからです。そのような状況ではエンジニアこそ粘り強く最善の方法を考え続けることが、より良いデザインを実現することに繋がります。

DO

  • 制約に抗い、チームのアイデアの枠を拡げる
  • 仮説をもとにアイデアの有効性を素早く検証する
  • 技術的な視点から新たなアイデアを生み出す

参考事例

SUNTORY+(サントリープラス)のプロジェクトでは、アイデアの有効性についてチームでの議論が停滞していたところ、仕様が決まりきっていない中でもエンジニアが「まずは作ってみる」というスタンスでプロトタイプをつくり、チームの議論を前進させました。

goodpatch.com

Design the Code - コードをデザインする

デザインにもユーザーの利用前・利用中・利用後という体験の流れがあるように、開発にも実装前・実装中・実装後という開発者の体験の流れがあります。開発者の体験はプロダクトの品質や速度に大きく影響するため、ユーザーはもちろん、開発者の体験が良くなるようにプロセス・仕組み・コードをデザインしていきましょう。

DO

  • チームにとって最適なプロセスと仕組みを設計する
  • 持続性のためにコードの品質を高く保つ
  • 仕様には書かれていない細部を自らデザインする

参考事例

ワンキャリアクラウドのプロジェクトでは、デザイナーとエンジニアが密にコミュニケーションを取ることで、ユーザー視点だけではなく、実装視点を踏まえたUIデザインを行うことができました。また、クライアントの開発チームと共同でスクラム開発を行い、柔軟な開発体制の構築支援も行いました。

goodpatch.com

Empower the Team - チームに力を与える

テクノロジーが日々進化する中で、個人で学び続けることは必要不可欠ですが、個人の時間や知識にも限界があります。しかし、組織の力を活用し、多様な視点を持つことで個人の限界を超えることができます。個人の学びを組織に還元し、仲間の失敗を称賛し、ともに成長できる環境をつくりましょう。

DO

  • フィードバックでお互いの成長機会をつくる
  • 何かひとつ他の人より詳しい分野を持つ
  • 新しい技術から学び、より良いユーザー体験を追求する

参考事例

Goodpatchのエンジニア組織では、以下のような社内交流施策を行っています。

  • 隔週で部署を超えたエンジニアが集まり、情報共有する「エンジニア共有会」
  • 全員がメンターを指名できる「メンター制度」

最近では、UIデザイナーとエンジニアが合同でデザインとエンジニアリングについてお互いに議論したり、エンジニア向けにUIデザインの勉強会を行うなどの活動も始まっています。

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コロナでリモートワークになる前の「エンジニア共有会」の様子

今後の行動指針の活用について

行動指針は一度決めたら終わりではなく、まだまだ不足している観点はあると思いますし、組織で運用していく中で課題が見つかることがあると思うので、定期的にアップデートしていく予定です。そのため、バージョンを付けて管理しています。※現在はv0.5

また、行動指針は策定しただけでは意味がなく、組織で活用することに意義があります。そのため、組織で行動指針を深めていくために各メンバーが行動指針に関連した具体的なナレッジの創出に取り組んでいます。

最後に

やはりGoodpatchのエンジニアとしては、より良いデザインをユーザーに届けるためにデザイナーの味方であり続けたいと思う一方で、限りあるリソースの中でしっかりと開発・運用ができるように見直しをかけないといけないこともあります。

入社した当時のエンジニアリングマネージャーが、私に言ってくれた言葉があります。

エンジニアは、サッカーで言うとフォワード。最後にゴールを決めるのはエンジニアだよ

この言葉は、デザインカンパニーで働くエンジニアとして、とても心に響きました。デザイナーがどれだけ設計にこだわったとしても、エンジニアがそれを適切に利用できる形に落とし込めなければ、ユーザーに価値を届けることはできない。Goodpatchのエンジニアとして、最終的な責任は自分たちが持つという気持ちで、プロダクトづくりに向き合っていきたいと思います。

※ちなみに私はサッカーは全くできません。

いかがでしたでしょうか。Goodpatch Engineer Principlesは、まだまだ発展途上ですが、もしこの内容に共感いただけた方はぜひ一緒に働きましょう!

そして、そんなGoodpatchのデザイナーやエンジニア達のアドベントカレンダーが明日から続々と投稿されますので、ぜひお楽しみください!(これはインプットが追いつかない...)