実はあれもアクセシビリティ?! カーブカット効果が教えてくれること

アクセシビリティ」という言葉を聞くと、

障害者のための特別な対応

というイメージを持つ人は、まだ多いかもしれません。

しかしアクセシビリティは、みんなに必要です。 障害者のために設計されたアクセシビリティは、結果的にみんなにとっても便利になります。

その現象が、カーブカット効果(Curb-Cut Effect)と呼びます。

カーブカット効果とは?

「The Curb-Cut Effect」 を説明するイラスト。 車椅子ユーザーが歩道のスロープを通過している様子を中心に、ベビーカーを押す人、スーツケースを引く人、子供用自転車に乗る子どもなどもスロープを利用している。 『WHEN WE DESIGN FOR DISABILITIES…WE MAKE THINGS BETTER FOR EVERYONE』と書いてある。 イラスト下部に「sketchplanations」と記載あり。
Jono Hey, Sketchplanations, CC BY-NC 4.0

「カーブカット」とは、歩道と車道の境目にある段差をスロープにした構造のこと。 もともとは、車椅子利用者が安全に移動できるように作られました。

ところが今では、

  • ベビーカーを押す人
  • キャリーバッグを引く人
  • 配達員
  • 自転車に乗る人
  • 一時的に足を怪我している人

などなど、ほぼ全員にも役立っています。

特定のグループを支援することを意図したデザインが、最終的にはより広範な人々に恩恵をもたらすようになります。

これがカーブカット効果です。

実は身近にある「カーブカット効果」

  1. クローズドキャプション(字幕):もともとは聴覚障害のある人がテレビや映像コンテンツを理解するために開発された機能。現在では、語学学習、騒がしい場所での視聴、音を出せない環境など、多くの人にとって欠かせない情報補助になっています。

  2. メール:商用電子メールサービスを開発した人物のひとり、聴覚障害者のヴィントン・サーフが、音声に頼らずコミュニケーションする手段として活用したテキスト通信が発展の背景。

  3. SMS:1960年代、聴覚障害者の科学者ロバート・ワイトブレヒトが発明したTTY(テレタイプライター)という技術により、電話回線で文字を送信できるようになりました。これは後のSMSやにつながる、テキスト通信の原点です。

  4. タッチスクリーン:1990年代後半、アメリカの大学発ベンチャー FingerWorks は、RSI(反復運動過多損傷)などの身体的な痛みを抱える人たちのために、マルチタッチによる入力デバイスを研究・開発していました。この技術は2005年に Apple に買収され、後に iPhone のタッチスクリーンUIの基礎となります。

  5. 曲がるストロー:病院でベッドに横になったまま水を飲めるように考案。現在では、子どもから高齢者まで、誰にとっても使いやすい道具として定着しています。

  6. オーディオブック:視覚障害者のための読書手段として発展。現在では、通勤・運転中の学習や娯楽として、多くの人の日常に溶け込んでいます。

「障害」は恒常的なものだけではない

Permanent(恒常的)、Temporary(一時的)、Situational(状況的)の3分類に分けたアクセシビリティの例を示す英語の図。 「Touch」では、恒常的:One arm、一時的:Arm injury、状況的:New parent。 「See」では、恒常的:Blind、一時的:Cataract、状況的:Distracted driver。 「Hear」では、恒常的:Deaf、一時的:Ear infection、状況的:Bartender。 「Speak」では、恒常的:Non-verbal、一時的:Laryngitis、状況的:Heavy accent。 と書いてある。
Microsoft Inclusive Design, CC BY-NC-ND

アクセシビリティが必要な状態は3つの種類に分けて考えることができます。

  • Permanent(恒常的):生まれつき、または長期的に続く状態
  • Temporary(一時的):怪我や病気など、一定期間だけ起こる状態
  • Situational(状況的):その場の環境や状況によって起こる状態

たとえば「片手が使えない」という状況は、

  • 片腕がない人(恒常的)
  • 腕を怪我してギプスをしている人(一時的)
  • 赤ちゃんを抱いている人(状況的)

すべてに共通して起こり得ます。

つまり、アクセシビリティは特定の誰かのための特別対応ではありません

誰でも、いつでも、アクセシビリティが必要な状況になる可能性があります。

だからこそ、最初から誰かの困りごとを起点に設計することが、結果として、みんなにとって強い社会をつくります。

今日紹介した事例が、次のプロダクトや機能を考えるときのヒントになれば幸いです。


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